熱中症が重症化する場合、その原因の多くが脱水と電解質不足になります。
「電解質」と言われると、いまいちピンとこない人もいるかもしれませんので、
電解質について少し触れてみましょう。
電解質とは「ミネラル」という言葉でも表現されます。
代表的なものとしてはナトリウム、カリウム、リン、カルシウム、亜鉛などがありますね。
どれも人体にとって重要なものばかりですが、
特にナトリウムが欠乏すると死に直結しかねない重要な電解質になります。
しかし、私たちは他の電解質に比べて
ナトリウムが不足するということは考えづらいと言えます。
なぜならナトリウムを豊富に含む食材は「塩」だからです
(むしろ取り過ぎの方が問題視されがちですね)。
食塩の組成式はNaCl(塩化ナトリウム)ですが、
このNaがナトリウムの元素記号になります。
昔、日本でも炭坑業が盛んだった頃、働き盛りの炭坑夫が突然死する事件が相次ぎましたが、
この原因となったのが熱中症による低ナトリウム血症であることが判明し、
炭坑夫は仕事の日には塩分の高い食事をして、
食塩を持参で仕事をしていたという記録があります。
生活習慣病が問題視されている現代では、とかく悪者あつかいされているナトリウム
ですが、実は生命維持にとってはとても重要な役割を担っているのですね。
では、具体的にナトリウムが体内でどのような働きをするのかについて説明しましょう。
塩を水で溶かす(水溶液にする)とナトリウムイオンと塩化物イオンとに分かれます。
(Na+とCl-)ナトリウムイオンは細胞外液という細胞の周囲を満たしている液体に
存在していて、筋肉の収縮と拡張を調整する働きがあります。
血管や心臓などは筋肉組織ですから、
これらがポンプの働きをするためにはナトリウムイオンが不可欠なのです。
ところが熱中症になると汗や吐瀉物、尿などによって大量の電解質が体外に流出するため、
低ナトリウム血症となり、心臓や血管が正常に機能しなくなり、
最悪の場合、死に直結する事態になってしまいます。
実に怖いですよね。
では、こうした熱中症による脱水や電解質不足を防ぐのに最適な食事は何かと聞かれると、
それはズバリ日本人のソウルフードとも言える味噌汁なんです。
味噌は大豆を塩漬けにして発酵させた調味料です。
大豆を原料とする味噌には、大豆イソフラボンや抗酸化力が高く、悪玉コレステロールを
減少させると言われるリノール酸やオレイン酸が豊富に含まれています。
これらの有効成分が糀(こうじ)の働きによって体内に吸収されやすい形に組成され、
でんぷん質もすぐにエネルギーに転化されるブドウ糖に変化しているため、
健康食材として再認知されるようになりました。
おまけに、味噌には大量のナトリウムイオンが含まれていて、
味噌汁にすることで効率よくナトリウムイオンを摂取することが可能なのです。
汁物ということで水分も一緒に摂れますから、
熱中症対策食品としてはこれ以上ないというぐらい最適な一品ですね。
起き抜けで体内の水分量が不足しがちな朝と、
一番活動するお昼には食事の時に味噌汁を一杯飲むようにすれば非常に効果的です。
ただし、高血圧などで塩分制限のある人は主治医と相談の上、
これからの時期の熱中症対策として活用してください。
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熱中症はとても危険な病気です。毎年何人もの死者が出るほどです。たかが熱中症だとあなどっては決していけません。大切な人の命を守る、自分自身を守る為にも熱中症に関する正しい知識を持ち、しっかりと予防・対策を行いましょう。 |